俄然ラブ&ピース!





ばたばたと慌ただしい足音を立て、血相変えて部屋に現れたのは、普段冷静な親貞だった。
「あ、兄上……!」
「何だ親貞。やけに騒々しいな」
「騒々しくもなります!とにかく兄上、説明してる暇はありません。俺たちが正
気保ってる間に隠れてください!」
「何言ってやがる!よくわかんねえけど野郎共だけ戦わせられっか!」
叫んで弟の胸ぐらを掴み上げた瞬間だった。
「あ……愛ユエニー」
親貞が突然虚ろになり、こう呟いたかと思ったら、
「兄上!」
ゴン。
鈍い音を立てて、元親の後頭部が畳と親愛の接吻を交わしていた。
「さあ兄上、二人で存分に愛を語りましょうぞ……」
親貞の息は荒い。瞳だけが爛々とぎらついている。あまりの豹変ぶりに元親は、
「ひぃっ!」
姫若子時代のような悲鳴を上げると、本能で思い切り脚を振り上げた。押し倒さ
れた体制の為、軌道上に在るのは勿論アレである。

アレ:お宝

みし、と膝が食い込んだ。
「ひでぶ!」
懐かしいようなそうでもないような奇妙な悲鳴を上げて撃沈した親貞の下から
這い出し、元親はとりあえず部屋から逃げ出した。
「親貞、おまえの事は忘れねえぜ……」
股間を押さえて痙攣している、哀れな弟を残して。



城内は、まさに混沌と化していた。
元親はまず、すれ違った部下にに何が起こっているのかと声を掛け、たのだが。
「アニキ……俺、間違ってました」
「な、なんだよ急に」
「実は俺、好きな人がいるんですが……俺なんかとは釣り合わないと思って諦めてたんス」
「バカヤロウ!そういう台詞は振られてから言うモンだろが!……俺も応援す
るからよ、もうちっと頑張ってみろ、な?」
「ア、アニキ……!俺、俺絶対がっかりさせませんぜ!」
おうその意気だ、そう励まそうとして、しかしそれは叶わない。目の前に猛獣
を視て、言葉は声にならなかったのだ。
「早速励みましょう。愛ユエニ」
少々アブなめな笑みを浮かべ、部下其ノ壱が迫ってくる。元親は危険を感じて
躊躇わず身を翻し、長い廊下を全力疾走する。
「待ってくださいアニキ!俺の恋心、応援するって言ったじゃないっスか!」
「知らねえっ!たっ、助けてくれ!」
出会う者すべてに助けを求めたものの返ってくる反応は部下其ノ壱と同じ様な
もので、元親の背を追う『愛ユエニ』は、今や大合唱となりつつある。前方に谷
の姿を見付けてほっと息を吐いたのも束の間、
「も……元親様ハァハァ」
長宗我部の良心とも言える忠臣の変わりように涙を禁じ得なかったのは言うまでもない。
それから暫く走り回り、最早城内に正気の人間は期待できないかと元親が半
ば絶望したとき、城の中には場違いな、鮮やかな緑が目に入った。
「元親、こちらだ!貴様を助けに来たぞ!」
その姿、その声。間違える筈がない。
「元就!」
呼び掛けたのだが、
「否!我はサンデー毛利!」
速攻で否定され、その一言で元親の思考回路は目出たく停止した。
固まった元親を、元就(本人曰くサンデー)がずるずると引きずって空き部屋に
連れ込む。
「さ……さんでー」
譫言のように繰り返していると、サンデーは無駄に胸を張って叫んだ。
「我はザビー様のお導きにより愛の偉大さに気付いた!したがって貴様を、ひ
いては貴様の部下をも救うため我はこの地に降りたったのだ!愛ユエニ!」
「野郎共をおかしくしやがったのはてめぇか───!!」
サンデーの言葉を聞くや否や、怒号とともに翻った元親の脚が、驚異的な破
壊力を伴って元就の腹を抉る。
げふゥと月並みに呻いてうずくまった元就は、一瞬で復活した。
「善いではないか!愛することの何が悪いというのだ!」
「うっせぇ!こっちは迷惑してんだ、さっさとこの怪しげな洗脳解きやがらねェ
と」
「元親」
表情を急に真剣なものに変えた元就に、元親は押し黙らざるを得ない。頬に
添えられた掌に、不覚にも心臓が高鳴る。
「貴様には冷たくあたりすぎていたかも知れぬ。すまなかった」
「え──」
「これからは、今までの分も含めて厭と言うほど愛してくれよう。我と来い、元
親!」
元親の顔が瞬時に赤く染まり、斯くて四国は、何とも平和的にザビー教の支
配下と成ったのであった。





END







オチが弱い気がするなァ……
チカの洗礼名はいっそのこと、“プリンセス千翁”でいいんじゃない。
これ以降脱出計画をプレイするとwithタクティシャンでプリンセスが出てくるん
だよきっと。
いろんな意味で強敵だ……!笑